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最高裁判所第三小法廷 昭和41年(あ)1651号 判決 1967年3月07日

主文

原判決および第一審判決中被告人に関する部分を破棄する。

被告人を懲役八年に処する。

第一審における未決勾留日数中二〇〇日および原審における未決勾留日数五〇日を、本刑に算入する。

押収してあるビニール袋入り麻薬二袋(原審昭和四一年押第一三四号の三)を没収する。

理由

被告人本人の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、上告適法の理由に当らない。

弁護人大河内躬恒の上告趣意第一点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第二点は、量刑不当の主張であって、いずれも上告適法の理由に当らない。

職権によって調査するに、麻薬取締法六四条一項は、同法一二条一項の規定に違反して麻薬を輸入した者は一年以上の有期懲役に処する旨規定し、同法六四条二項は、営利の目的で前項の違反行為をした者は無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び五百万円以下の罰金に処する旨規定している。これによってみると、同条は、同じように同法一二条一項の規定に違反して麻薬を輸入した者に対しても、犯人が営利の目的をもっていたか否かという犯人の特殊な状態の差異によって、各犯人に科すべき刑に軽重の区別をしているものであって、刑法六五条二項にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」に当るものと解するのが相当である。そうすると、営利の目的をもつ者ともたない者とが、共同して麻薬取締法一二条一項の規定に違反して麻薬を輸入した場合には、刑法六五条二項により、営利の目的をもつ者に対しては麻薬取締法六四条二項の刑を、営利の目的をもたない者に対しては同条一項の刑を科すべきものといわなければならない。

しかるに原判決およびその是認する第一審判決は、共犯者である金圭烈が営利の目的をもっているものであることを知っていただけで、みずからは営利の目的をもっていなかった被告人に対して、同条二項の罪の成立を認め、同条項の刑を科しているのであるから、右判決には同条および刑法六五条二項の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすものであって、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

よって、刑訴法四一一条一号、四一三条但書により、原判決および第一審判決中被告人に関する部分を破棄し、当裁判所においてさらに判決することとする。

第一審判決がその挙示の証拠によって確定した被告人の所為(ただし、被告人に営利の目的があったとの部分を除く。)は、麻薬取締法六四条一項、 一二条一項、刑法六〇条に該当するので、所定刑期の範囲内で、被告人を懲役八年に処し、刑法二一条により、第一審における未決勾留日数中二〇〇日および原審における未決勾留日数中五〇日を本刑に算入し、麻薬取締法六八条本文により、押収してあるビニール袋入り麻薬二袋(原審昭和四一年押第一三四号の三)を没収し、訴訟費用は、刑訴法一八一条一項但書により負担させないこととする。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 松本正雄)

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